エステサロン開業の流れとは?用意するべき資金の目安や成功のポイントを解説
エステサロンを開業したいと考えたとき「どのような準備が必要なのか」「資金はいくらかかるのか」といった疑問をもつ方は多いのではないでしょうか。今回は、エステサロン開業の流れや費用の目安、経営を軌道に乗せるためのポイントについて、初心者にもわかりやすく解説します。
もくじ
エステサロン開業に必要な条件や資格はある?
エステサロンは、比較的自由度の高い業種であり、開業するにあたって特別な国家資格が必須というわけではありません。
ですが、提供するメニューの内容によっては、特定の資格が必要になる場合があります。この点をしっかり理解しておくことが、後々のトラブルを防ぐうえでも重要です。
たとえば、まつ毛パーマやまつ毛エクステンションといった施術は、いずれも「美容行為」とされるため、美容師の国家資格が求められます。無資格でこれらの施術を行うと、法律に違反することになるので注意が必要です。
また、フェイシャルトリートメントの中で、顔のうぶ毛をシェービングする場合も要注意です。この施術は「理容行為」にあたるため、理容師の国家資格が必要です。つまり、顔剃りをサービスに含めたい場合は、理容師免許の取得が前提になります。
さらに、すでに美容師や理容師の資格をもっており、それを活かしてエステサロンを運営したいと考える場合には、保健所への届出も必要になります。この際、店舗を「美容所」あるいは「理容所」として届け出ることになります。
届け出には所定の申請手続きが必要で、保健所の定める設備基準や衛生管理の条件を満たすことが求められます。手洗い設備や施術台の配置など、具体的な設備基準もあるため、事前に確認しておくことが大切です。
一方、ボディトリートメントやリラクゼーションマッサージなど、医療行為に該当しない一般的なエステメニューについては、必ずしも資格が求められるわけではありません。
ただし、安全性の高いサービスを提供するには、正しい技術や知識を身につけておくことが欠かせません。施術スクールや民間資格などで技術を学んでおくと、顧客からの信頼にもつながります。
エステサロンの開業準備にかかる期間の目安
エステサロンの開業には、思っている以上に多くの準備が必要になります。何を、いつまでにやるべきかを明確にして、無理のないスケジュールを立てることが成功の第一歩です。
まず最初にやるべきことは、事業計画の策定です。どのようなサロンにしたいのか、どのくらいの資金が必要なのかをはっきりさせ、そのうえで資金調達方法を検討します。
この段階には、一般的に2〜3か月かかるとされています。資金調達で金融機関から融資を受ける場合は、審査にも1か月ほどの期間が必要になります。
次に重要なのが、立地の選定です。エリアの特性や競合店の数などをリサーチしながら物件を探し、契約するまでに3〜4か月かかることもあります。
物件が決まれば、内装や外装の設計に入り、施工に1〜2か月が必要です。このタイミングで、施術に必要な設備や備品を手配することになります。エステ用のベッドやスチーマーなどの準備には、2〜3か月程度かかると考えておきましょう。
スタッフを採用して研修を行う場合は、さらに時間がかかります。採用活動と教育には、数か月から半年ほど見込んでおくのが一般的です。質の高い接客や施術を実現するには、時間をかけた研修が必要不可欠です。
また、集客の準備も忘れてはいけません。ホームページの制作やビラ、SNSの立ち上げなど、広告ツールの準備にも2か月ほどの時間を要します。開業直後からお客さんを迎えられるよう、集客は早めに動き出すことが求められます。
さらに、保健所や税務署などへの各種届出書の作成と提出にも、1か月程度かかるとされています。これらは事業を正式にスタートさせるうえで必要な手続きです。
エステサロンの規模やメニューの内容によって多少前後はありますが、全体の準備期間としては6か月以上かかるのが一般的です。余裕をもって計画を立てることで、焦らずに開業準備を進めることができるでしょう。
エステサロン開業までの流れ
エステサロンを開業するには、思いつきで始められるものではなく、段階を踏んで準備を進めることが必要です。しっかりとした事前計画があることで、スムーズな開業とその後の経営が安定しやすくなります。ここでは、開業までに踏むべき基本的な流れを紹介します。
事業計画の立案
まず初めに行うべきは、事業計画の立案です。どのようなサロンにしたいか、誰をターゲットにするか、提供するサービスの内容や料金設定、運営体制などを細かく整理します。事業計画は、自分の頭の中を整理するためだけではなく、後の融資や物件探しの場面でも役立つ重要な資料になります。
また、売上予測や支出の見込みなど、収支に関する計画も盛り込むことが求められます。これにより、開業後の経営リスクを少しでも減らすことができます。事業の方向性を明確にしておくことで、ぶれない軸をもちながら準備を進めることができます。
資金調達
事業計画で必要な資金の目安がわかったら、次は資金調達に進みます。エステサロンの開業には、店舗の賃料、内装費、機材の購入費、広告費、人件費など多くの費用がかかります。自己資金だけでまかなうのが難しい場合は、公的な融資制度や金融機関の融資を検討することになります。
融資を受けるには、事業計画書の提出が必要になるため、先にしっかり準備しておくことが大切です。審査には一定の期間がかかるため、余裕をもってスケジュールを組みましょう。
物件の確保
資金の見通しが立ったら、次は物件の確保です。エステサロンに適した立地を探し、周辺の環境や競合店の状況などを調査します。通行量が多い場所や、駅からアクセスしやすい場所は集客の面で有利ですが、その分家賃も高くなる傾向があります。
物件を選ぶ際には、サロンのコンセプトやターゲットに合った雰囲気の場所かどうかを見極めることが大切です。また、設備面や内装の変更が可能か、契約条件なども細かく確認しておきましょう。
機材・備品の準備
物件が決まったら、内装工事と並行して機材や備品の準備を進めます。施術ベッドやスチーマー、タオルウォーマー、照明器具など、施術に必要なものを揃えます。リネン類や制服、受付まわりの備品なども含めて、細かくリストアップしておくと、抜け漏れが防げます。
また、使用する機材によってはメンテナンスや操作に関する知識が必要な場合もあるため、購入時に説明をしっかり受けておきましょう。開業後すぐに営業が始められるよう、早めの準備が肝心です。
届出を行う
エステサロンを開業するには、必要な書類を作成し、各関係機関への届出を行わなければなりません。個人事業主として開業する場合は、税務署に「開業届」を提出します。また、提供するサービスの内容によっては、保健所への届出が必要な場合もあります。
とくに、理容師や美容師の国家資格を活かして施術を行う場合は「理容所」「美容所」として保健所への申請が必要です。この際、施設の構造や設備にも一定の基準があるため、事前に確認しておくと安心です。
自宅でサロンを開業する場合に必要な資金の目安
エステサロンの開業には、必ずしもテナントを借りる必要はありません。自宅の一部を活用して開業するという方法もあります。
この場合、物件の家賃が発生しないぶん、初期費用を抑えてスタートできるというメリットがあります。ただし、それでも一定の費用はかかるため、事前に必要な金額の目安を知っておくことが大切です。
まず、自宅の一部をサロンとして使用する際には、内装の工事が必要になることがあります。とくに生活感を感じさせない空間づくりや、衛生面に配慮した設備の整備などが求められるため、改装にかかる費用は最低でも10万円、規模によっては数百万円になることもあります。
次に必要になるのが、消耗品や備品の購入です。これにはタオルやリネン類、施術で使用するオイルや化粧品、受付用の文具類などが含まれます。これらは数万円程度の予算でそろえることができますが、開業直後の来客数を見込んで、余裕をもって準備しておくと安心です。
また、エステ機器の購入にもまとまった費用が必要です。フェイシャル用のスチーマー、超音波機器、ボディ用の痩身マシンなど、導入する内容によって費用は大きく変わります。目安としては、数十万円から数百万円ほどの予算を見ておくとよいでしょう。
物件を借りてサロンを開業する場合に必要な資金の目安
テナントを借りてエステサロンを開業する場合は、自宅開業よりも初期費用が大きくなる傾向があります。店舗としての体裁が整いやすく、立地によっては集客に有利となる一方で、さまざまなコストが発生する点には注意が必要です。
まず、開業前に最も大きな費用がかかるのが内装工事です。エステサロンでは、清潔感やリラックスできる空間が求められるため、一般的な内装では不十分な場合があります。
照明や床材、壁紙、間仕切りの設置、電源の増設など、施術内容に応じて設備の整備が必要です。このような工事にかかる費用は、一般的に数百万円にのぼることもあります。設計の内容や店舗の広さによって金額は変わりますが、大きな支出になる項目です。
次に考えるべきは、家賃や保証金、敷金です。これらは契約する物件の賃料や地域、契約内容によって大きく異なります。一般的には、月々の賃料の数か月分が保証金として求められるケースが多く、さらに前払い家賃や礼金が加わることもあります。
たとえば、月の賃料が20万円の物件であれば、初期契約時に数十万円から100万円以上の資金が必要になることも珍しくありません。
また、開業に向けて備品や消耗品の準備も欠かせません。これは数万円ほどでそろえられますが、内容によっては追加費用が発生することもあります。サロン専用の家具や受付まわりのインテリアなどを選ぶ際にも、予算を意識することが大切です。
さらに、エステ機器の購入費も必要です。施術内容によって使用する機器は異なりますが、数十万円から数百万円の費用がかかります。高機能の機器は導入コストがかかるものの、他店との差別化やリピート率の向上に貢献します。
エステサロンの開業費用を抑える方法を紹介
エステサロンの開業にはさまざまな費用がかかりますが、すべてを新品や自己資金でまかなう必要はありません。工夫次第で初期費用を大きく抑えることもできます。
中古品やリース商品を活用する
開業準備の中でも、とくに大きな出費となるのが施術機器や家具などの設備費です。これらをすべて新品でそろえると、予算を大きく圧迫してしまいます。そこで検討したいのが、中古品やリース商品の利用です。エステ業界では、中古市場が比較的整っており、状態のよい機器が多く出回っています。
たとえば、フェイシャルスチーマーやキャビテーション機器などは、新品価格の半額以下で手に入る場合もあります。信頼できる中古業者を選べば、メンテナンス済みの商品や保証付きの商品もあり、安心して導入することができます。状態や使用年数を確認し、自分のサロンに必要なスペックを見極めることが大切です。
また、最新機器を導入したいが予算が足りないという場合には、リース商品も選択肢になります。リース契約なら初期費用を大幅に抑えられ、月々の支払いに分割できるため、経営開始後の収益とバランスをとりながら機器を使用できます。リース終了後に機器を買い取るオプションがあるケースも多く、導入のハードルが低くなります。
補助金や助成金の申請をする
エステサロンを開業する際には、国や自治体が提供している補助金・助成金の制度を活用することも有効です。とくに個人事業主や中小規模の事業者向けに設けられている支援制度は数多くあり、要件に合えば高額な資金援助が受けられる可能性があります。
こうした補助金や助成金は、申請時期や締切が決まっている場合が多いため、スケジュールに余裕をもって準備する必要があります。申請できる制度があれば、積極的に活用することで、開業時の資金負担を大きく減らすことができます。
エステサロンの経営を成功させるためのチェックリスト
エステサロンの開業はスタートにすぎません。安定して経営を続けるためには、開業後の運営にも計画性と工夫が求められます。ここでは、経営を成功させるために開業前後で確認しておきたいポイントとして、4点を紹介します。
コンセプトの作り込みがされているか
エステサロンの経営でまず大切なのが、コンセプトが明確になっているかどうかです。なんとなく「美を提供する場所」としてではなく、どのような悩みをもつ人に、どんなサービスで応えるのかを具体的に決めておく必要があります。
コンセプトがしっかりしていれば、お客さんにサロンの魅力が伝わりやすくなり、リピート率にも影響してきます。
計画が現実的かどうか
夢をかたちにするのは大切ですが、収支計画が現実に即していないと、すぐに経営が行き詰まってしまいます。とくに売上予測や来店客数の見込みは、甘く見積もりすぎないことが重要です。
開業初期は認知度が低いため、満席になることは少なく、予約が入らない日もあるかもしれません。その点も含めて、現実的な数字を元にした収支計画を立てておくことが必要です。
運転資金が不足すると、せっかく開業したサロンを続けられなくなるリスクもあるため、計画段階での見直しを忘れないようにしましょう。
集客の工夫がされているか
どんなによいサービスを用意しても、お客さんに知ってもらわなければ意味がありません。SNSを活用した投稿、地域のフリーペーパーへの掲載、知人からの紹介キャンペーンなど、複数の方法で集客を行うことが必要です。
また、ホームページや予約サイトの充実も集客に欠かせない要素です。サロンの雰囲気やスタッフの人柄が伝わる内容にしておくことで、はじめての方にも安心感を与えることができます。定期的な情報発信を行うことで、リピーターの獲得にもつながります。
競合サロンと差別化がされているか
同じ地域に似た価格帯やサービス内容のサロンが多い場合、自分のサロンの強みがわかりにくくなってしまいます。そこで必要なのが、他店との違いを明確に打ち出すことです。
差別化の方法は、施術メニューに限らず、営業時間の設定、施術空間のデザイン、接客のスタイルなどさまざまです。ほかのサロンにはない「ここにしかない体験」が伝わるようにしておくことが、競争の中で選ばれるための鍵になります。
新規顧客・リピーターの獲得のコツを紹介
エステサロンの売上を安定させるには、新規のお客さんの獲得と、リピーターの維持の両方が欠かせません。その中でも、とくに重要なのが初回カウンセリングの質です。来店時に行うカウンセリングの内容や進め方によって、契約率が大きく変わってきます。
効果的なカウンセリングには一定の流れがあります。とくに成果を生みやすいとされているのが「信頼関係構築40%、必要性作り30%、提案20%、クロージング10%」という比率です。この流れを意識することで、相手の気持ちに寄り添いながら、自然に契約へとつなげることができます。
まずは、信頼関係の構築が何より大切です。お客さんの悩みをしっかりと聞き、ていねいに共感する姿勢をもつことで、安心してもらえる環境が生まれます。この段階で無理な売り込みをすると逆効果になるため、あくまでも相手の立場を尊重しながら関係を築きます。
次に、お客さん自身が「施術の必要性」を感じるよう導いていきます。具体的な肌の状態や体の変化を一緒に確認しながら、自分に合ったケアが必要だと気づいてもらうことがポイントです。この段階をていねいに行うことで、提案がより受け入れられやすくなります。
提案では、お客さんの悩みに合ったコースやプランを紹介します。無理に高額なメニューをすすめるのではなく、相手の目標や予算に合った提案をすることが信頼の継続につながります。最後のクロージングでは、強引にならず、自然に決断を後押しするような声かけを意識するとよいでしょう。
エステサロンの経営を成功させるにはマーケティングの知識も欠かせない
エステサロンを経営するうえで、技術力や接客力はもちろん大切ですが、それだけでは安定した経営は難しい場合もあります。実際にサロンを継続して成長させるためには、マーケティングや経営の知識も欠かせません。
サロン運営におけるマーケティングとは、集客の方法だけではなく、どのようにお客さんに自店の魅力を伝え、選ばれる存在になるかという点にも深く関わっています。たとえば、SNSやホームページを使った情報発信の工夫、口コミを広げるための施策、ターゲット層に合わせたメニューや価格設定など、すべてがマーケティングの一環です。
そして、もっとも実践的な学び方として「成功している経営者から学び、真似をする」ことが効果的です。実際に結果を出している人たちは、どのような考え方で運営し、どんな工夫をしているのかを観察し、自分の経営にも取り入れていくことが、成長への近道となります。
まとめ
エステサロンの開業には、計画立案から資金準備、物件選定、届出まで多くのステップがあります。資金面では工夫次第で大きな節約も可能です。開業後の成功には、しっかりしたコンセプトと現実的な計画、効果的なカウンセリングやマーケティングの知識が不可欠です。地道な準備と学びが安定経営の鍵となります。