ネイルサロンの開業方法を完全解説|必要な準備・資金・資格とは?
「いつかはネイルサロンを開業したい」そう考えているネイリストの方は多いのではないでしょうか。しかし、いざ独立を決めたものの、何から手を付けたらいいのかわからないと悩む方は少なくありません。独立で成功するためには、事前の準備や資金計画・資格取得などが欠かせません。そこで今回は、ネイルサロンを開業するにあたって必要な情報をくわしく解説していきます。独立を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
もくじ
ネイルサロンを開業する魅力やメリット
ネイルサロンは、他業種と比べると必要な開業資金が少なく、ネイル道具と施術に必要な家具さえあれば、自己資金だけでも十分独立が可能です。一般的には、100~400万円ほどが目安とされています。
専門の機器を導入する必要のある飲食店や美容院などと比べると、少ない設備投資で始められます。ただし、内装や外装などにこだわりたいという場合には、ネイルサロンであっても多額の初期費用がかかるケースもあります。
一等地に店舗を構えるとなると、物件取得費用だけで数百万円かかることもあるでしょう。しかし、基本的にはそれほど初期費用が必要ない業態なので、独立しやすいと言えます。
また、ネイルサロンは、出店場所と形態の自由度が高い点も魅力の一つです。雑居ビルや商業施設の中に店舗を持つサロンもあれば、マンションの一室や自宅を店舗として開業するサロンもあります。とくに、自宅であれば、テナント代がかからないため、費用を抑えて開業できるでしょう。
開業前に決めるべきコンセプトや方向性
ネイルサロンをオープンするにあたっては、コンセプトを明確に定めることが大切です。計画の段階でしっかりとしたコンセプトが決まっていると、サロン運営を軌道に乗せやすくなります。
まずは、ターゲットとなるお客様のペルソナを設定することをおすすめします。幅広いお客様を対象とするとオーナー自身やスタッフの負担が増える恐れがあるため、初めはざっくりとターゲット層を決め、徐々に絞り込んでいきましょう。
ペルソナ設定は「40代以上の子育て中の主婦」「20代の働く女性」「値段は気にせず質の高いサービスを受けたい方」など、細かく設定することが大切です。しっかりとコンセプト・ターゲット層を設定することで、サロン開業に必要な準備が見えてきます。
たとえば「お店全体の内装」や「働くスタッフの雰囲気」「料金設定」など、コンセプトに合わせて決めることで、よりターゲット層にアピールしやすくなります。ただし、欲張りすぎるとペルソナ設定があいまいになりやすいので、3つぐらいに絞ると良いでしょう。
ネイリストとして独立する方法
ネイリストとして独立する方法としては、大きく分けて「テナント開業」「自宅開業」「フランチャイズによる開業」の3種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットを紹介します。
テナント開業
テナント開業とは、ビルや商業施設の一角を借りて、独立した店舗として開業する方法です。テナント開業の最大のメリットは、立地を自由に選べる点です。充実した資金があれば、駅前や繁華街の中心地といった人が集まりやすい好立地に店舗を構えることができます。
その一方で、ビジネス向け物件は家賃が高い傾向にあります。初期費用として家賃半年分の保証金や敷金が必要となるケースもあります。
とくに、好立地での出店を検討している場合、集客のしやすさと引き換えに多額の資金を用意しなければなりません。キャッシュフローの計算をしっかりとしないと、安定した経営が見込めません。
そのため、資金に余裕のある方やネイルサロン経営の経験が豊富な方におすすめします。
自宅開業
ネイルサロンは、施術スペースさえ確保できれば自宅でも開業できます。小規模での開業を目指す方に向いています。
自宅開業のメリットは、敷金や賃料などの物件取得費がかからない点です。通勤の必要がなく、予約時間をうまく調整すれば子育てや家事との両立も図れます。
ただし、生活感が出やすく、非日常空間を演出しづらい点がデメリットとして挙げられます。また、実際に暮らす場所なのでネット上に住所を公開しづらく、大々的に集客がしづらい点も弱点です。
フランチャイズによる開業
ネイルサロンはフランチャイズに加盟して開業することもできます。本部のブランド力やノウハウ、経営サポートを活かして運営できるので、安定した経営が見込めます。
3種類の開業方法の中では、最も集客に有利な方法と言えるでしょう。とくに、経営未経験者の方におすすめの方法です。
ただし、売上の良し悪しに関わらず、ロイヤリティを支払わなければならない点はデメリットと言えます。また、本部の方針やマニュアルに従わなければならないため、思い描いていた店舗運営・営業スタイルを実現できない可能性もあります。
開業に必要な資格・届け出
ネイリストとして開業する上で、特別な資格は必要ありません。しかし、開業届の提出が必要であり、取得しておくと有利になる資格というのは存在します。それぞれ詳しく解説します。
開業届の提出
個人で開業するにあたっては、管轄の税務署に「開業届」を提出する必要があります。開業届の提出は、店舗がオープンしてからでも問題ありませんが、事業開始から1か月以内と定められています。忘れることのないように、早めに手続きを進めましょう。
なお、個人事業主は、毎年確定申告を行います。その際、特別控除を受けられる青色申告事業者になるためには、その年の3月15日までに所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。なお、その年の1月16日以降に新しく業務を始めた場合には、業務開始から2か月以内と定められています。
特別控除を受けると、最大65万円の控除が受けられます。課税対象となる利益の金額が減るため、大きな節税効果に期待できます。長くサロン運営するつもりであれば、青色申告事業者になることを検討しても良いでしょう。
ネイルに関する資格は必須ではない
ネイリストになる上で、とくに資格は必須ということはありませんが、取得しておくと顧客から信頼されやすくなるといったメリットがあります。未経験からネイリスト独立を目指すのであれば、ネイルスクールや通信講座などでネイル技術・知識を身につけることをおすすめします。その上で、ネイルに特化した資格取得を目指すと良いでしょう。
取得しておくと有利になる資格
とくに、おすすめの資格は「JNECネイリスト技能検定試験」「JNAジェルネイル技能検定試験」「JNA認定ネイルサロン衛生管理士」の3つです。JNECネイリスト技能検定試験は、受験者数が最も多い歴史ある検定試験です。ネイリストとして必要な知識・技術が問われます。
ランクは1~3級までに分かれており、実践的なスキルが求められます。中でも、1級はトップレベルのネイリストとして必要な知識・技術を持っていることが保証されます。
JNAジェルネイル技能検定試験は、ジェルネイルに関する知識と技術が問われる人気の高い検定です。初級・中級・上級の3ランクに分かれており、筆記試験に加えて実技試験も実施しています。
さらに、JNA認定ネイルサロン衛生管理士は、ネイルサロンにおける衛生管理自主基準の理解度を証明する資格のことです。JNA認定校での講習を受けた上で、筆記試験に合格する必要があります。サロンでの実務経験は必要なく、18歳未満であっても理美容専門学校やネイルスクールなどで学ぶことで受験資格を得られます。
開業にあたって必要な資金・費用の内訳
開業に必要な資金は、出店形態によって異なります。それぞれにかかる費用とその内訳を紹介します。
テナント開業
テナントを借りて開業する場合、総額335~1,610万円ほどが目安となります。内訳としては、敷金・礼金・保証金を含めた物件取得費が約100~500万円、内装・外装の改装費用が約200~1,000万円、家具や照明の購入費用が約10~30万円、ネイル施術に必要な備品の購入費用が20~30万円、広告宣伝費が約5~50万円となっています。
店舗を借りるとなると、立地がコストを左右します。また、価格差の大きい改装費用については、こだわりが多いほど高い傾向にあります。費用を抑えたいのであれば、居抜き物件を選ぶと良いでしょう。
さらに、非日常空間を演出するためには、家具や照明といった什器にもお金をかけたいところですが、費用を抑えるのであればフリマアプリやリサイクルショップを活用するといった工夫が必要です。そのほかにも、開店前からターゲット層にアピールするために、広告宣伝費は十分確保しておきたい部分です。
自己資金でまかないたいと考えている方には、まず居抜き物件からスタートすることをおすすめします。経営が安定したタイミングで移転することで、コストを抑えつつ理想の店舗づくりを実現できることでしょう。
自宅開業
自宅開業にかかる費用は、総額60~210万円ほどが目安です。その内訳としては、内装費用が約5~100万円、看板設置費用が約20~40万円、家具や照明などの購入費用が約10~30万円、ネイル施術に必要な備品の購入費用が20~30万円、広告宣伝費が約5~50万円となっています。
自宅でサロンを開く場合、店舗開業よりはコストを抑えられます。家具や設備代などは自宅にあるものを活用することで、1/2~1/3ほどに抑えられるケースもあります。
初期費用を大きく左右するポイントが内装費用です。間取りの変更などの大規模なリフォームが不要であれば、壁紙を変える費用程度で抑えられるでしょう。
店舗用の入り口を新たに作ったり、看板を設置したりすると、一気に費用が跳ね上がります。なお、マンションの場合には、規約で商業利用が認められていないこともあるため、あらかじめ確認しておきましょう。
フランチャイズによる開業
フランチャイズによる開業の場合は、220~700万円ほどが目安です。その内訳は、加盟金や保証金が約20~200万円、物件取得費が約100~300万円、資材・設備費が約100~200万円となっています。
フランチャイズに加盟して開業する場合、本部との契約内容によって必要となる資金が大きく変わってきます。フランチャイズ本部が物件を用意してくれるのであれば、物件取得費は必要ありません。
また、フランチャイズ本部によっては、別途研修費用が請求されることもあります。ただし、フランチャイズの場合は、他店舗での成功例があるため、銀行の融資に通りやすいというメリットもあります。
ネイルサロン開業に利用できる助成金
上記の通り、ネイルサロンを開業するにあたっては、さまざまな費用がかかります。飲食店や美容室と比べると安いとはいえ、初期費用を用意するのが大変という方も多いことでしょう。
ネイルサロンオーナーは個人事業主となるため、新規開業にあたって助成金や補助金が適用される可能性があります。助成金は、国や地方自治体が実施しており、一定の条件を満たすことで支給されます。具体的には「キャリアアップ助成金」や「人材開発支援助成」「地方雇用開発助成金」などが挙げられます。
また、補助金も同じく国や地方自治体が実施していますが、受付期間が設けられており、申請後に審査が行われます。ネイルサロンで利用できる補助金としては「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」「ものづくり補助金」などがあります。補助金を活用することで、ネイルサロンで使う機器の購入費や設備費の一部を負担してもらえます。
それぞれの公式サイトで対象となるかどうかを確認し、積極的に活用しましょう。
ネイルサロン運営を成功させるためのポイント
念願のネイルサロンをオープンしても、それがゴールというわけではありません。長期間にわたって店舗運営を続けるためには、リピーターが増えるような店舗づくりを心がける必要があります。サロン運営を成功させるためのポイントをいくつか紹介します。
スタッフ・お客様が喜ぶ店舗づくり
ネイリストは、ネイルを通してお客様に喜びや感動を与えられるお仕事です。お客様を笑顔にするためには、スタッフが笑顔でいることが大切です。
オーナーはもちろん、スタッフ全員の笑顔がお店の雰囲気を作り出します。固定客を増やすためには、お客様だけでなく、スタッフにとっても過ごしやすい環境づくりが欠かせません。
たとえば、サロンの清掃を徹底すると、気分が良くなり前向きな気持ちになります。サロンの規模や立地に関係なく、常に清潔な環境を整えることで自然と顧客満足度がアップします。
ポータルサイトに登録する
ネイルに特化したポータルサイトに登録することで、新規出店をアピールすることができます。ネイル専門のサイトであれば、既にターゲットが絞られているため、集客に役立ちます。
中でも、口コミ投稿機能が搭載されたサイトを選ぶことが重要です。実際に施術を受けたお客様に投稿してもらうことで、新規顧客の獲得につながります。
ただし、あくまでも素直な感想を書いてもらうことを心がけましょう。不自然な口コミは、お店の信頼性の低下を招く恐れがあります。
また、サイトによっては、ブログ機能が用意されているものもあります。積極的にブログを更新することで、オーナーの想いや得意なデザインをアピールできます。
SNSを活用した集客
最近は、SNSを活用して集客するネイルサロンが増えてきています。とくに、代表的なのがInstagramやX(旧Twitter)・LINEです。
Instagramは写真投稿がメインのSNSなので、ネイルとの相性が抜群です。自分が得意とするデザインや実際にお客様の施術例を掲載することで、自然とターゲット層の目に留まります。自分の技術力を効果的にアピールすることができます。
集客につなげるためには、自分やお店のファンを増やすことが大切です。お店のコンセプトやネイルにかける想いを合わせて投稿することで、賛同してくれるファンが見つかりやすくなります。
また、Xはキャンペーンやイベント情報を告知するのに適しています。まずは、プロフィール欄をしっかり埋めて、お店のことを周知しましょう。
その上で、ハッシュタグをつけて、自分が手掛けたデザインや施術例を載せると効果的です。Xならではのリポスト機能も活用して、サロンのPRにつなげましょう。
さらに、LINEは、公式アカウントにて情報発信をすることができます。登録者向けにメッセージを送ることができるので、キャンペーン情報などを効率よく配信できます。そのほかにも、個別メッセージで予約のやり取りも可能です。上手に活用することで、新規顧客の獲得はもちろん、リピート率の向上にも効果を発揮します。
まとめ
ネイルサロンを開業するためには、技術力だけでなく資金や設備、集客戦略など、総合的な準備が必要です。自分の理想と現実とをすり合わせながら、計画的に準備を進めていくことが成功の秘訣です。また、開業にあたって特別な資格や営業許可などは必要ありませんが、個人事業主としての届出は必要なので、注意しましょう。なお、開業届は、お店をスタートしてから1か月以内に届け出を行わなければなりません。さまざまな準備に追われて忘れることのないように気をつけましょう。本記事が独立を検討している方の参考になれば幸いです。